imp___kgyk's blog

大好きな人の思い出を忘れないようにする備忘録

TV GUIDE Alpha VOL.42

'19年、Snow Manが座長を引き継ぎ、'20年は映画という形でさらなる進化を遂げた和のエンターテイメントショー「滝沢歌舞伎ZERO」。彼らにとってホームグラウンドとも言える新橋演舞場では2年ぶり、 そしてデビュー後初の有観客公演でもある待望の舞台だ。 9人の顔が一人ずつスクリーンに映し出される度にメンバーが舞台に登場し、全員が揃うと岩本照が先導する「春の踊りはよぉいやさー」のフレーズで新たなる幕開けが告げられた。

映画版のエンディングでも予告されていた通り「ひらりと桜」で降り注ぐ300万枚の桜と衣装は鮮やかなピンクから、医療従事者の方たちへの感謝の思いを伝える意味を込めたという深い青へ。まるで花びらと遊ぶかのように歌い踊った後は、シルエットまで美しく透ける素材のガウンをふわりと脱いで新曲「One Heart」を披露した。 向井康二から9人のソロ歌唱が始まるこの曲は 「僕らは一人じゃない」という メッセージが織り込まれた、会えなかった時間を埋めるバラードだ。

岩本の堂々たる口上をはさみ、次なる演目は映画版で話題を呼んだ「九剣士」。 ダークなムードの中に登場したIMPACTors が斬り合いへの期待を高めるセリフを一人ずつ語り、Snow Manが舞台に上 がると激しいアクションが始まる。 映画版で本格的な殺陣に初挑戦したという向井の緩急のある動き、ラウールと目黒蓮の頼もしいバディ感、 艶と力強さが同居する宮舘涼太の剣さばき。 岩本 深澤辰哉 阿部亮平 の蹴りも交えた三つ巴、 佐久間大介の二刀流と渡辺翔太の逆手持ちが観客の目を奪い、最後は敵を斬りまくった後の阿部の治安の悪い舌打ちが演舞場に響き渡った。

岩本、向井、目黒による「変面」も伝統的な演目のひとつ。 白いマントに身を包んではいるが指先の動きにそれぞれの個性が宿り、スッと首を振るとマスクが変わっていくマジカルな動きで神秘的な空気を醸し出していく。続いてはラウールがほとばしるパッションや胸の震えを解き放って踊り、大人の男の落ち着いた色気や儚さを感じさせる深澤、阿部がメンバーカラーの紫、緑の映像をバックに歌う「Maybe」。"ゆり組"によるバラード「My Friend」では、渡辺の歌声はさらに伸びやかに、宮舘のキューブフライングはよりしなやかに。 宮舘の完璧な角度の開脚と渡辺の声が重なり合う瞬間、思わず息を飲むようなエモー ショナルな美が生まれていた。

そこから一度、2階バルコニーにIMPACTorsの影山拓也、横原悠毅が登場し、名物の「腹筋太鼓」へ。腹筋のみならず背筋まで芸術作品のごとく鍛え上げて気合いと余裕でその場の空気を支配する岩本はもちろん、トレーニングで体の厚みを増した渡辺、今年はそけい部の謎の痛みを克服して腹筋の痛みに目覚めたという深澤、特殊な訓練を受けてメカ太鼓で回転する佐久間、向井、目黒と、メンバーそれぞれが汗を光らせた。素肌にジャケットを羽織ったIMPACTorsが映像とリンクしたダンスを見せた後は、すっぽんから登場する佐久間のパートを皮切りに黒と金の新しい衣装での「Black Gold」。映画版のように金網と炎はなくともメンバーカラーの照明の中で一人一人が見せ場を作り、ハードな世界観を作り出した。

恒例の舞台での生化粧タイムの進行を任されたのは、IMPACTorsの基俊介と椿泰我。かつてSnow Manのようにはっぴを羽織ったふたりが、10周年公演で同じ役割を担って涙した渡辺に思い出話を振ったり、Snow Manからのアドバイスを紹介するコーナーも。続いて初披露されたのはIMPACTorsのオリジナル曲「Wildfire」は岩本が振り付けを担当。岩本が五右衛門の化粧を施しながら真顔で首を動かしてリズムをとれば、深澤、ラウールは楽しげに体を揺らしている。細かい手足の動き、指で「W」を作る振り付けなど細部まで岩本らしさが詰まった一曲だ。

そして、阿部と佐久間が女形に挑む「桜の舞」から「滝沢歌舞伎」がスタート。唇を重ねているのでは?というほど接近する阿部と目黒、可憐さの中に色気も加わった佐久間と渡辺による和の''ダブルデート''は、終始うっとりしてしまうほど麗しい。深澤、ラウールが放つ弓を合図に始まる「五右衛門ZERO」は附け打ちの音と大向こうの掛け声が、歌舞伎の楽しさを盛り上げる。舞台「ABKAI」を経験してさらに安定感を増した宮舘から岩本への刀投げも見事に成功。迫力の立ち回りと全員の見得に、盛大な拍手が送られた。映画版のダイジェストが流れた後は、肉体表現で感情を爆発させる「組曲」と華やかな総踊り「花鳥風月」。総使用量10トンという大量の水が降り注ぐ中でふたつの演目に新たな命が吹き込まれ、第一部は幕を閉じた。

第二部の『満月に散る鼠小僧〜残した夢は「笑いあり、涙なし」〜』では江戸の町の人々に夢を見させてくれた鼠小僧亡き後の物語が描かれる。団子屋のお丸(深澤)、二代目鼠小僧になることを期待されている岡っ引きの新吉(岩本)、小判大好きな兄の金之助(佐久間)と蘭学を学ぶ弟の銀之助(渡辺)、黒影組を名乗る盗賊の官兵衛(向井)、半兵衛(目黒)、以蔵(ラウール)は続役。しかし、黒いレースで縁取られた飛沫防止フェイスシールドを持つお丸さんの口から、猫のあべぞう(阿部)があの世にいったことがあっさりと告げられる。新キャラクターは、これまでは奉行所の同心を演じていた宮舘扮する、背中のハート柄はかわいいがダダ漏れする心の声は強気な犬のダテタマ。そして阿部が演じるのは経験不足を責められてキレ芸を見せることもある、岡っ引きの日和見安兵衛だ。新吉に町のヒーローになってほしいと願うお丸と決心がつかない新吉、ひたすらコミカル担当の金さん銀さん、以蔵の心模様の変化によって揺れ動く黒影組と、それぞれのキャラクターの個性が際立ち、テンポよく物語が進んでいく。

大詰めは回転する屋根の上での大立ち回り。金さん銀さんの愛らしい「ハックション!」と同時に桜の花が勢いよく舞い、前回までの大量の水にかわって桜吹雪の中でアクションが繰り広げられる。アクロバティックな動きも得意なダテタマ、いきなり天気予報をする安兵衛、ほうきを武器にして戦うお丸が見得を切る中、新吉はまるでパルクールのように板を利用して軽やかに屋根の上へと登っていく。新吉と以蔵が登ったハシゴが客席にせり出す迫力たっぷりの見せ場を経て小判が降るクライマックスに突入し、Snow Man全員の大見得で幕となった。

フィナーレは、水面ではなく桜の花びらの上で歌う、「滝沢歌舞伎」に欠かせないナンバー「With Love」。ひとフレーズずつ心を込めて丁寧に歌い継いでいくSnow Man、そして舞台へと上がったIMPACTorsの表情からは、映画版から新しく加えられた「今度は必ずみんなで歌おうよ。笑顔で会えるその時まで」という歌詞の意味と、舞台に立てる喜びを噛みしめていることが伝わってきた。

一昨年との大きな違いはもちろん、その間にSnow ManがCDデビューを果たし、さらなる人気グループへと躍進したことだろう。今年の彼らは経験や自信に裏打ちされているであろう、言葉では説明のつかないスターのオーラを纏いながらも、瑞々しいがむしゃらさも決して手放してはいけない。伝統を受け継ぎながら、彼らだけが見せられる唯一無二の新たなステージへ。Snow Manが今、多くの人の心を揺さぶっている理由は何なのか、その答えはこの舞台の上にある。